IPtalk9tの平行表示方式(通訳入力)


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ビデオマニュアルに平行表示の説明があります。


070427

IPtalk9tシリーズの「選択」ページで「情報保障(応用機能)」以上を選ぶと「表示1」ページの右上に「表示方式」枠が現れます。
その中の「平行表示方式(通訳入力)」のチェックを入れると自動的に「空行のみ改行」と「入力文の表示位置の表示」(■◆のマーク)のチェックが入り、入力者ごとに入力した文を連結し表示するようになります。

自分の入力位置「◆」と他の人の入力位置「◇」が表示される。
空行を入力すると、次の入力は、文末に新規行を追加し表示し、「ワ」ボタンの表示が「■」に変わります。

文末に追加表示する場合以外は、文の途中に挿入表示されます。この時、挿入された文が行を増やす時は、スムーズスクロールではなく、一気に新行を挿入表示します。(つまり、カクッと行が表示される。)

<「平行表示方式(通訳入力)」時の制限>
@「送」ボタン修正は使えません。(修正はUndoか「訂正送信」を使ってください。)

<注意>
@スクロールが上下する場合があります。これは、行末まで入力すると次の行に「◆(◇)」を表示しますが、その時Enterして新行へ移動すると、「◆(◇)」を消去するために一行が消えて、その行の上の表示は一気に下がるためです。
A入力しても表示されない場合は、表示点が表示部から外れてしまっていないか確認してください。

<ヒント>
@訂正は、Undoか「訂正送信」を使ってください。
A表示点は、自分を入れて9人まで記憶できます。
B新行に入力する時は「ワ」ボタンが「■」表示になっているのを確認してください。
C「入力2」ページの「自動で表示に流す」を二人連係入力で使うことができます。

----<解説>----------------------------------------
この「平行表示方式(通訳入力)」機能は、以下のような意図で作りました。

<背景>
自立支援法の施行に伴い、パソコン要約筆記に「通訳入力」が求められています。
「通訳入力」とは、聴覚障害者への「権利保障」の観点から出た情報保障の手法の一つです。
「権利保障」とは、「場への参加の保障」で、例として良くあげられるのは、聴覚障害者が会議の議長など、他の人の発言に即座に反応する必要がある場合に、その役割を果たすことができる情報保障を言います。

この「権利保障」には、以下の要件が上げられると考えます。
@他の人の発言に即座に反応できる、即時性。
A他の人の発言を完全に理解できる、正確性。
B情報保障を長時間集中して読むことができる、可読性。

つまり、「速く、正しく、読み易く」の三原則そのものです。
しかし、従来の三原則ではなく、「通訳入力」という言葉があえて使われている背景には、従来の三原則のトレードオフ(競合関係)のバランス点以上の情報保障が求められていると思われます。

パソコン要約筆記は、連係入力により、Aの正確性については、「全内容入力」が可能です。
しかし、このためには、高速入力が必要とされ、表示速度が速くなるためにB可読性が損なわれます。
(具体的には、200文字/分の表示を2時間読むのは苦痛であるということです。)
また、高速入力は、交互に表示する二人連係で行われるため、パートナーの表示タイミングを合わせるために、入力部に文を溜める必要があるなど即時性に劣る欠点があります。
(具体的には、会議が紛糾した時、突然、議長が「採決します!」と発言した場合、それ以前の表示を待つために、即時性が損なわれてしまいます。)

<機能概要>
このため「通訳二人入力」機能は、次のような入力を可能としました。

入力開始すると表示点「◆(◇)」を記憶し、他の人の入力に影響されずに、一人の入力は一つの文にして連結して表示する。
この時、他の人が入力を開始すると、別の行から表示が始まり、別の文として表示する。
表示点「◆(◇」)は、入力者ごとに9人まで記憶することができる。
つまり、Aさん、Bさんが、別の文を同時に入力・表示することが可能です。

(例)イメージ



この表示方式を、従来の二人連係入力「交互表示方式」に対して、二人連係入力「平行表示方式」と呼びたいと思います。

<現状把握と対策検討の概略>
「速く、正しく、読み易く」の三原則は、要約筆記の長い歴史の中で、そのバランス点を模索して来ましたが、未だに日本中が納得する定説は出ていません。
これは、基本的に、三つの要素が、相反する性質を持っているからであると考えます。
議論を簡略化して図式的にしてしまえば、次のように言えると思います。
つまり、「読み易く」に重点を置いた「選択要旨入力」は、「正しく」に劣りますし(情報欠落が多くなる)、「正しく」に重点を置いた「全内容入力」は、「読み易く」に欠点を持ちます(文字数が多くなる)。
また、「正しく」と「読み易く」のバランスを取る「全要旨入力」は、文処理のため入力部に文を溜める傾向があり「速く」に問題を持ちます(即時性に劣る)。
従来提案されて来た方法では、同時に全ての要件を満たすことはできないと考えます。

一方、実際の情報保障の現場では、これらの三原則の優先順位が、最初から最後まで同一ということは稀であると考えます。
上であげた議長の場合でも、情報保障の要件は、会議の状況によって常に変化しています。
ある時は、即時性が求められ、ある時は、正確性が重要であり、また会議が長時間になる時などは、可読性が重要になるなどです。
このように考えると、情報保障の最初から最後までを、単一の方法で行うことは、適当でありません。
つまり、「速く、正しく、読み易く」を従来以上のバランス点に置くためには、その瞬間瞬間に適した入力方法を臨機応変に選択する「状況対応型」の入力がより適していると考えました。

しかし、このような「状況対応型」の入力は、特に新しい方法ではなく、手書き、パソコンを問わず、従来より、三原則の工夫の中で、全国各地で自然と行われて来たと考えます。
パソコン要約筆記では、「正確性」に重点をおく二人連係入力を基本として、状況により「即時性」や「可読性」を考慮した入力を従来から行って来ました。
しかし、入力を交互に表示するIPtalkの「交互表示方式」の制限などから、状況の変化に応じて入力方法を変更することが困難であったり、情報欠落を避けられない場合がありました。

○例1
「正確性」重視の二人連係入力から、「即時性」重視の入力への移行
Aさんが入力中に、「採決します」という即時性を必要とする発言があった場合、Bさんが「採決します」と入力しても、Aさんが入力文を表示するまでは、表示に流すことができない。

○例2
「可読性」重視の入力から、「即時性」重視の入力への移行時
Aさんが聞き溜めを使った選択要旨入力中に、「採決します」という即時性を必要とする発言があった場合、Bさんが即座に「採決します」と入力・表示してしまうと、Aさんは、それまで聞き溜めていた内容を入力できず、大きな情報欠落が発生してしまう。

この時、二人連係入力「平行表示方式」を取ることで、以下のような入力が可能となります。

○例1を「平行表示方式」で行った場合
Aさんが入力中に、「採決します」という即時性を必要とする発言があった場合、Bさんが「採決します」と入力して即座に表示する。
Aさんは、入力中の文を後追いで最後まで入力し表示する。

○例2を「平行表示方式」で行った場合
Aさんが高要約度で入力中、「採決します」という即時性を必要とする発言があった場合、BさんがAさんの表示を待たずに「採決します」と入力・表示する。
Aさんは高要約度の入力を続け、後追いで追加表示できるので、情報欠落は発生しない。

<その他の効果>
「平行表示方式」は、連係入力に以下のような効果を期待することができると思います。
1)表示タイミングを連係する負担の軽減
従来の「交互表示方式」の連係入力では、@入力する話の範囲(特に入力を開始する点)A入力を表示するタイミングの情報を互いに交換する(感じ取る)必要がありました。
しかし、「平行表示方式」では、Aの表示タイミングは気にする必要が無く、入力者の負担が減ると思われます。
また、表示順序が逆転するミスも無くなると思います。
2)文処理に集中できる
表示タイミングの連係を取る必要が無いので、入力開始後は、整文・要約を比較的落ち着いて行うことができると思います。
「平行表示方式」では、基本的に一人で文を完結させる必要があるので、気持ちも文処理に集中すると思われます。
3)即時性の向上
表示タイミングの連係が必要なくなるという点から、文を短く分けて表示することが可能になります。
このため「表示に自動で流す」の機能も利用でき、即時性の向上が期待されます。
4)ペアの融通性向上
二人入力のペアの入力速度が大きく異なっていても入力が比較的容易と思われます。
入力ペアの技量の差に対する許容度が上がることが期待されます。
5)補助入力の融通性向上
交互に表示する必要が無いので、飛び入りの補助入力がやり易いと思われます。
例えば、多量の数字や氏名の入力を、飛び入り助っ人入力者が担当して、その部分だけを完璧に入力するなどができると思います。
6)多人数入力の可能性
交互に表示する必要が無いので、三人入力や四人入力などの多人数入力が、「交互表示方式」より容易ではないかと思われます。

<「通訳入力」の案>
最初の議長の例では、その方が選択要旨入力の高要約度の入力を基本的に望む場合は、「平行表示方式」を使い次のような入力を行うことができると考えます。

・通常は、選択要旨入力の高要約度の一人入力を行い、長時間会議の可読性を確保する。
・即時性が必要な場合は、待機している補助入力者が即時に入力表示する。
・正確性が必要となる場合は、二人連係の高速入力に移行する。

<お願い>
「平行表示方式」機能は、それだけで「通訳入力」「権利保障」を実現できるわけではありません。
入力者が、それぞれの場面で優先される情報保障の要件を的確に把握・判断することが重要です。
この「平行表示方式」をうまく使い、「通訳入力」をみなさんに研究・実践していただきたいと思います。

----<解説 おわり>----------------------------------------


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