2017年3月
北海道高等聾学校の行事(始業式など)のライブ映像と合成したパソコン文字通訳
北海道高等聾学校 視聴覚部 丸山 修

本校では、行事の際の文字による情報保障をビデオカメラ2台(メイン用、手話通訳用)、IPtalkがインストールされたPC3台(表示用、字幕操作用、色変わり用)、プロジェクター1台で下記のように実施しています。

【画像@】表示用ノートPCとの接続
2台のビデオカメラからの映像をRCAケーブルでUSBビデオキャプチャを使用して表示用ノートPCに送っています。
USBビデオキャプチャは、iOデータ社製のGV-USB2とバッファロー社製のPC-SDVDを使用しています。
この表示用ノートPCの画面をプロジェクターで体育館のスクリーンにそのまま投影しています。

【画像A】表示用ノートPC画面

表示用ノートPCのメイン画面(右側 メイン用)はGV-USB2に同封されているLight Captureというソフトを使用して表示させています。
サブ画面(左側の黄色の枠で囲まれた部分 手話通訳用)は、フリーソフトのCamera Viewer(BACKYARD工学ナビの物置」からダウンロード可能)を使用しています。
 

【画像B】Light Captureの画面
Light Captureのみを立ち上げた画面です。Light Captureは、本来はビデオなどの映像を再生しながらPCのHDDなどに保存するためのソフトで、画面上部はモニター、画面下部(黄色の枠で囲まれた部分)は録画操作用になっています。そこに表示専用にしたIPtalkの画面を、2行表示できるよう高さを調整して配置し、録画操作画面を隠すと画像Aのようになります。

【画像C】スクリーンに投影されている様子

体育館のステージ上のスクリーンに、画像Aの画面がプロジェクターで投影されている様子です。

【画像D】

校長先生の挨拶を表示しています。メイン画面(スクリーン右側)は校長先生の口元が見えるよう、顔を大きめに表示し、サブ画面(スクリーン左側)には挨拶内容を手話通訳する先生の上半身が映るようにしています。

【画像E】
生徒たちから見る(ステージ下から見る)と、このような感じになります。校長先生の口元、手話通訳の先生どちらもそのまま見るよりかなり大きく表示することが可能になります。
また、話す人(校長先生)の映像と手話通訳者の映像、字幕をまとめてスクリーンに表示していますので、生徒の視維の移動幅が少なくなり、見やすいと思います。

【画像F】

サブ画面を使用しない(話す人が自分で手話表現を行い、手話通訳がいない場合)時は、表示用ノートPCのCameraViewerのタスクをクリックして最小化させ、表示させないようにします。このようにワンタッチで切り替えることが可能になっています。

【画像G】校歌斉唱時の表示

校歌斉唱は、生徒が伴奏し、歌詞はPDF(高さをLight Captureのモニター画面と同じにしておく)を表示します。その下に歌っているところをIPtalkのカラオケ風色変わり機能を用いて表示しています。
2台のPC(字幕操作用、色変わり用)を同時に操作する必要があるので、なかなか難しい作業です。
メイン画面、PDF表示の切り替えも、表示用ノートPCのタスクをクリックするだけで可能です。

【画像H】国歌斉唱時の表示
国歌斉唱は、本校の小林亮太先生が作成した動画(MP4形式)を再生して行います。
歌っているところの色が自動で変わるようになっており、校歌斉唱の時と違って再生ボタンをクリックするだけでいいので楽に操作できます。国歌の演奏は、表示用ノートPCのイヤホンジャックを体育館のスピーカーに接続して流しています。この画面も、表示用ノートPCのタスクをクリックするだけで切り替え可能です。
なお、この動画は希望される学校などに配布することができます。容量は1.65MBですので、E-mailに添付して送信致します。

【本校の配線・設営イメージ】

【IPtalkを導入した経緯】
本校では、平成11年度の校舎改築時に、ISISという映像と字幕を組み合わせて表示させるシステムを体育館に設置しました。行事の際は、そのシステムを活用して情報保障を行ってきましたが、平成26年度頃からシステムの老朽化に伴い、動作が不安定になり、表示される映像が以前よりかなり暗くなってしまいました。
修理もしくは更新することを検討しましたが、ISISがインストールされているPCはOSがWindows98であり、後継機もXPまでしか製造されておらず、平成26年度の時点ですでに販売終了になっていました。そのため修理も更新も難しい状況でした。また、使用できる予算もほとんどありませんでした。
そこで、できるだけ費用がかからないように、既存の機械、設備を活用してISISに代わるシステムを作り上げようと、同じ分掌の加藤章先生と協力しながら、何度か試行錯誤を経てこのようにIPtalkと他のソフトを組み合わせたシステムに至りました。
なお、IPtalkを活用するにあたって、開発者の栗田さんに何度もアドバイスをいただきました。栗田さんのご協力なしではこのシステムの構築は不可能だったと思います。この場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。

【補足】
・IPtalkにもGV-USB2からの映像を表示させる機能がありますが、本校のPCではどのような設定を試してもコマ落ちが生じ、綺麗に表示することはできませんでした。そのため苦肉の策としてLight Captureを使用する方法に行きつきました。この方法のいい面は、校歌のPDFを表示する際、IPtalkの字幕表示設定を変える必要がないことでしょう。また、Camera Viewerと組み合わせることで、簡易的ではありますが2画面的な表示も可能となりました。さらにタスクバーが有効になっているので、パワーポイントもスライドショーの設定を変えることにより併用することが可能になります。高額なビデオミキサを使用する必要がないので、コスト的にとても優れています。このシステムを構築するにあたって新規購入したものはGV-USB2(定価5,300円、実売価格3,500円程度)だけでした。

・GV-USB2とLight Captureを使用する前には、Camera Viewerをメイン画面として使用していたこともありました。GV-USB2以外のUSBビデオキャプチャを既にお持ちでしたら、それとCamera Viewerを組み合わせて、このシステムと同様に表示させることも可能です。

・校歌を色変わりで表示させないのでしたら、PCBは必要ありません。PCが2台だけの場合、HUBを用いずにPCをLANケーブルで直接つなぐことも可能です。その場合、必ずクロスタイプのケーブルを使用して下さい。


写真と文は、北海道高等聾学校 前田圭一先生(写真)、丸山修先生(写真と文)から提供していいただきました。

質問や問合せは、丸山先生にお願いします。
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